今年の10月、厚生労働省が「新しい時代の働き方に関する報告書」を公表しました。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35850.html
令和3年のデータによれば、テレワークを導入している会社は51.9%、2000人以上の企業規模では90%程度に達しているとのことです。
好きな時間に働く、好きな場所で働く、といった自由な働き方を希望する人は、この6年の間に20~30代社員で増加傾向であり、特に20代前半には多く、令和4年には約52%が好きな時間、約44%が好きな場所で働くことを希望しているとのことです。
裁判官は、基本的には「請負」的な働き方といえます。
事件が(判決や和解等により)解決さえすれば、どの事件に、どの程度の労力をかけるかについては、自由な裁量があります。
「好きな時間に働く」という意味では、自由な働き方が可能な職であると思います(この点は、裁判官に限らず、弁護士も同様ですが。)。
したがって、裁判官によって、その勤務スタイルは様々です。
朝早く登庁し、勤務終了後、育児のために帰宅し、子供を寝かし付けてから起案等をする裁判官もいますし、そのような家事育児をする必要はない裁判官の中には、文字通り朝から晩まで勤務をしている方もいます。
起案に取り組むスタイルも様々です。少しずつ起案をする裁判官もいれば、まとまった時間をとって一気に起案をする裁判官もいます。
他方、「好きな場所で働く」という意味では、裁判官の働き方はなかなか変化が難しい面があります。
自宅にいながら、テレワークで裁判手続を行うことは、現状の法制度上は認められていないので、裁判所に登庁して、執務をする必要があります。
事件記録の機密性に鑑みると、テレワークを実現することは、なかなかハードルが高そうです。
また、通常、裁判官は3年程度のペースで全国転勤をしています。
若手の判事補の頃は、一時期2年ペースで異動することがあったり、家庭等の事情により、1つの任地に4~5年以上いることがあったりしますが、基本は3年程度です。
優秀な司法修習生が弁護士に流れてしまったり、若手の裁判官(判事補)が弁護士に転向したりするケースが増加しているという記事が出ていますが、上記のような裁判官の働き方が要因の一つとなっています。
これは、司法修習生の方や弁護士の方の話を聞いても明らかです。
このような事態を解決するためには、例えば、
- 裁判官による自宅からの裁判手続の参加を可能とし、全国転勤を不要とする。
- 民間企業と同じように、エリア制(関東、関西等のエリアの範囲内の勤務)の裁判官を採用する。
等といった裁判官の働き方改革が求められているでしょう。
裁判官も、「好きな場所で働く」という意味での「自由な働き方」が可能となれば、より優秀な人材が集まる(あるいは、出ていかない)ように思うのですが、なかなか制度設計は難しいようです。
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