4歳、5歳、6歳の子について、審判で認められる面会交流の頻度や時間、方法について

家事事件

4歳、5歳、6歳(年少~年長)の子は、保育園や幼稚園への通園をしており、親から離れ、初めての集団生活をしている年齢です。

したがって、このような年齢の子の面会交流を考えるに当たっては、0歳~3歳の子とはまた別個の考慮が必要になってきます。

もふもふ
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4歳、5歳、6歳の子について実施される調査の内容や、面会交流の頻度や時間、方法を判断する考慮要素等について、家庭裁判所の視点から解説します。

本記事の参考文献等

面会交流事件で裁判官が良く参照する文献や参考書についてはこちらの記事もご参照ください。

  • 松本哲泓『面会交流-裁判官の視点にみるその在り方-』(新日本法規、2022年)
  • 横田昌紀ほか「面会交流審判例の実証的研究」判タ1292号8頁以下
  • 武藤裕一ほか『離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点』(新日本法規、2022年)

4歳、5歳、6歳の子について、どのような調査官調査が行われるのか?

このような年齢の子であれば、0歳~3歳の子とは異なり、大人との間で、ある程度の簡単な会話をすることができるのが一般的です。

したがって、非監護親と子との間で、任意の面会交流が実施されているような場合には、「子の心情調査」を実施し、非監護親に対して、どのような印象を抱いているのか確認することがあります。

また、その子の発達状況はどうなのか(身辺自立がどの程度できているのか等)、何か配慮が必要な子なのかといった情報は、「子の安全」の観点から、面会交流の内容や方法を検討する上で重要です。

したがって、子の客観的な状況を把握するために、子が通園している保育園や幼稚園に対する「関係機関調査」を実施することがあります。

具体的には、担任の先生や主任クラスの先生、園長から話を聴取することになります。

このような調査に入る前に、監護親から、保育園や幼稚園に対し、「今後、裁判所から家庭裁判所調査官という人が話を聞きにくるようです。」と一報を入れていただくことが多いです。いきなり裁判所の人間が調査に行くと、保育園や幼稚園が委縮してしまうことがあり、スムーズな調査の支障になり得るからです。

さらに、非監護親と子との交流の様子を具体的に観察するために、「交流場面観察」を実施することがあります。

家庭裁判所に子を連れてきてもらい、非監護親と児童室で30分~1時間程度、交流を実施してもらうことになります。その様子を、家庭裁判所調査官が観察します。

ケースによっては、裁判官や調停委員が観察することがあります(高裁は、できる限り原審=家庭裁判所の裁判官に判断を尊重しようとする傾向があります。高裁の審理は、書面が中心であり、高裁の裁判官が、当事者と対面することはほぼないからです。裁判官も交流場面を観察すると、その旨が調査報告書に記載されます。原審としては、「裁判官も交流場面を観察した。」という事実を記録化し、「高裁に、原審の判断を尊重してもらいたい。」という思惑があります。)。

なお、この交流場面観察の前に、監護親の自宅を家庭訪問し、一度子と話をするのが一般的です(あくまで、交流場面観察の準備調査ですので、上記の子の心情調査とは別物です。)。

家庭裁判所調査官としては、子から話を聞く前に、子との間で、ある程度の顔つなぎをしておく必要があるからです。

4歳、5歳、6歳の子について、意向や心情はどの程度審判で重視されるのか?

このような年齢の子は、ある程度の会話ができるとはいえ、十分な判断能力が備わっているとはいえない年齢ですので、その発言自体(例えば、「パパ嫌い」、「ママ嫌い」、「会いたくない」等)を捉えて、直ちに面会交流の頻度や時間を検討することはありません

その子の年齢や発達状況、同居時の非監護親との関わり、家庭裁判所調査官との面接時における表情等から、子の発言の真意を検討することになります。

例えば、「パパやママの家に泊まりたい。」との発言があったとしても、監護親から長時間離れることまでは十分に予測できていない可能性もあり、実際に宿泊の交流を認めた場合、子が監護親がいない状況に不安や寂しさを示し、子の心情を害するおそれがあります。

他方、「パパやママに会いたくない。」との発言があったとしても、例えば、同居中の非監護親と子との関係に特段の問題はなかったような場合には、子が非監護親に対する消極的な心情を示すに至ったとしてもやむをえない合理的な理由がうかがわれない限り、子の真意であるとは評価し難いでしょう。

4歳、5歳、6歳の子について、面会交流の頻度や時間、方法を決める考慮要素は?

上記で紹介した各種調査を実施した上で、裁判官は、面会交流の頻度や時間、方法を判断します。

面会交流において、絶対の基準があるわけではありませんが、次のような点を考慮しています。

このような年齢の子は、保育園や幼稚園を中心とした安定した生活リズムを保つことが重要です。したがって、このような生活リズムを壊すような交流内容は、子の福祉に反するため、認められません。

これくらいの時期から、体操教室やスイミング、公文といった習い事を始めていることも多いです。裁判官としては、このような習い事に影響が生じないように、面会交流の内容を判断することになります。

裁判官において、習い事が入っている日を交流日として指定し、事実上、習い事を辞めさせるよう命じることは、まずないといっていいでしょう。

また、このような年齢の子は、周辺自立が整いつつあるとはいえ、まだまだ手のかかることが多いです。中には、まだオムツが取れていない子がいたり、特別な配慮が必要な子もいます。

非監護親が、同居中、育児に関与することが少なかったりするなど、面会交流中の子への配慮に不安が残るような場合には、面会交流の頻度や時間は、控え目になることが多いです。

さらに、このような年齢の子は、自分1人で交流場所まで移動することができる年齢ではないので、監護親の協力が必要不可欠です。

監護親と非監護親が高葛藤であるような場合には、子の受渡しの場面において、監護親側の祖父母や第三者機関の援助(「いわゆる受渡し型」)を検討する必要があるでしょう。

面会交流における監護親側の祖父母の協力については、この記事も参考にしてください。

さいごに

以上のとおり、4、5歳、6歳の子は、成長してきているとはいえ、周囲の大人によるサポートがまだまだ必要な年齢ですので、裁判官は、面会交流の頻度や時間、方法を慎重に判断しています。

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