離婚事由の考え方(離婚が認められるためには何年間の別居が必要か)

家事事件

明確な不貞行為やDVがある場合は、婚姻関係の破綻が認められます。

一方、このような明確な離婚事由がない場合に、裁判官がどのようか思考過程で破綻の有無を審理、判断するのかについて、別居期間の位置付けを踏まえつつ、解説します

もふもふ
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別居期間は、破綻の有無を判断するために重要な考慮要素ではありますが、それだけで破綻の有無が判断されるわけではありません。

本記事で参考にした文献

  • 安倍嘉人「控訴審からみた人事訴訟事件」家裁月報第60巻第5号1頁

同居しているか、別居しているか

まず、その夫婦が、同居しているのか、あるいは別居を開始しているのかを確認します。

同居を継続している場合、基本的は円満関係である、あるいは円満の回復可能性があると推認されるので、婚姻関係が破綻していると認定するのは困難でしょう。

家庭内別居の場合、同居していることには変わりがないので、離婚はおよそ難しいということになりますか?

もふもふ
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家庭内別居であったとしても、事情によっては、通常の別居の場合と同様に判断される可能性もあります。

例えば家庭内別居状態が何年も継続しているような場合には、通常の別居している場合と同様に考えることができるでしょう。

ただし、家庭内別居は、かなり厳格に判断されます。敷地内で、母屋と離れで生活している等、物理的な生活スペースが明確に分かれているか否か、経済的にも、独立しているか否かといった事情が考慮されます。

食事を一緒にとっているとか、あるいは洗濯物を一緒に洗っているといった事情がある場合には、家庭内別居が認められるハードルは高いといえます。

別居の直前のエピソードは何か

離婚を考えている夫婦は、婚姻時からの婚姻史を振り返り、不満が出てくるものです。

熟年離婚の場合には、30年、40年前のエピソードが裁判の中で出てくることになります。

しかしながら、婚姻史の中で不満があったとしても、同居を継続してきた以上、そのようなエピソードから直ちに、婚姻関係が破綻しているとは推認できません。

裁判官としては、別居直前のエピソードを最も重視します。

①どのような不和のエピソードがあり、②そのエピソードに関する相手方あるいは被告の帰責性はどの程度であり、③今後の円満の可能性がどの程度残されているのか、といった点を検討します

別居後にどのようなやり取りがされているか

別居後の経過も大切です。

離婚を求められている相手方や被告が、夫婦円満のために、具体的な努力を積み重ねているような場合には、夫婦関係の回復可能性を裏付ける事情となるでしょう。

別居後も、離婚を求めている側が家計を管理している場合もあり、このような経済的な協同関係が継続しているような場合にも、破綻を否定する方向に作用する事情であるといえます。

頻繁にLINE等で連絡をとり、日常的な会話をしていたり、食事や旅行に行ったりしているような場合も、上記と同様に評価されるでしょう。

他方、別居後も、特段のやり取りがなかったり、かえって互いを非難し合ったり、あるいは双方が弁護士を立てて離婚に向けての交渉を継続しているような場合には、破綻を裏付ける事情といえるでしょう。

別居期間は何年が必要か

インターネット上の弁護士事務所のコラム等を拝見していると、離婚が認められるために必要な別居期間として、3~4年説や6~7年説があります。

しかしながら、裁判官は、単純に別居期間だけで破綻の有無を判断するわけではありません。

別居期間が長くても、その間、夫婦間で円満がうかがわれるやり取り(家族旅行に行く等)があったりする場合には、直ちに婚姻関係の破綻が推認されるわけではありません

また、例えば、首肯できる別居理由がないにもかかわらず、乳児を抱え、実家の援助を期待できず、無職無収入である妻を放置して、別居を強行したような場合には、いくら別居期間が長くても、信義則上、離婚の主張が制限されることもあります

とはいえ、別居期間の目安はないの?

もふもふ
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多くの裁判官が目安としている一応の相場はあります。

上記参考文献では、「やはり3年、4年という別居期間では、なかなか破綻を認めることが難しい事案が多いというのが高裁での実務的な感覚であったと言ってよいように思います。」(同文献17~18頁)と指摘されています。

別居期間以外に、特段の破綻の理由がないような場合には、上記文献が指摘するとおり、それなりの別居期間がないと、夫婦関係の回復可能性が否定できないでしょう。

実務的には、余程の破綻の理由がない限り、最低でも2年の別居期間が必要であるという感覚です。

ただし、繰り返しにはなりますが、上記のとおり、単純に別居期間の長短だけでは、破綻の有無は判断できません。①別居直前のエピソードや②別居後のやり取りが重要であり、これらの事情が総合考慮されることになります。

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