婚姻費用・養育費について、裁判官が良く参照する文献や参考書を紹介します(随時、更新していく予定です。)
婚姻費用や養育費を算定するに当たっては、算定表が用いられていることが広く知られています。また、最近では、弁護士事務所のホームページに、自動計算フォームが公開されており、双方の収入や子の人数等を入力するだけで、簡易にこれらの金額を調べることができます。
もっとも、実際の実務では、このように単純に解決できる事件もありますが、他方で、婚姻費用・養育費の各論点について、激しく争われることがあります。
例えば、上記の双方の収入をみても、残業代を考慮するか、収入に変動がある場合はどうするか、無職の場合はどうか、転職した場合はどうか等、数多くの論点があります。
裁判官が参照する文献等に基づいて主張ができると、効果的です。
おススメ度を星5段階で評価してみます。
松本哲泓『(改訂版)婚姻費用・養育費の算定ー裁判官の視点にみる算定の実務ー』(新日本法規、2020年)
元裁判官の松本先生が執筆されたものです。いわゆる「松本本」と呼ばれています。
婚姻費用・養育費の論点が網羅されており、論点について迷ったときに、まずは参照する本です。
1つ難点を挙げるとすれば、松本本では、随所で裁判例や審判例が引用されていますが、公刊されていないものも多く、判例検索ソフトでヒットしないことがあるという点です。当該裁判例や審判例が前提とした事実関係を把握しないと、その射程等について正確な理解ができないのですが、全文に当たれないため、これが難しくなっています。
とはいえ、このような難点を補って余りある網羅性です。
松本哲泓『即解330問 婚姻費用・養育費の算定実務』(新日本法規、2021年)
これも松本先生が執筆されたものです。
調停委員向けに書かれたものですが、その内容は、実質的には上記松本本の補訂版になっています。
Q&A方式であり、また、1問につき数行(中には長いものもありますが。)で解説されているため、大変読みやすいものとなっています。
例えば、自営業者の総収入を認定する解説(Q107)では、確定申告書の見本をもとに、どの数字に着目すれば良いのかを簡潔に説明しており、視覚的に大変分かりやすいです。
価格も安いため、当事者の方が弁護士に委任せずに婚姻費用・養育費調停や審判を戦う場合には、こちらの本を手元に置いておくと良いかも知れません。
東京家庭裁判所類型別審理モデル検討委員会「婚姻費用・養育費審理モデルについて」ケース研究333号
東京家裁における婚姻費用・養育費の各調停における審理モデルが紹介された文献です。
審理のポイントや調停の各段階における進め方について解説がされています。
「婚姻費用や養育費の調停は、どのように進むの?」という疑問がある方等は、一度参照してみても良いかも知れません(どうやら市販されているものではないため、発行元である日本調停協会連合会に対し、購入方法について問合せをする必要があります。)。
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