法廷を誤って施錠してしまった場合、裁判はどうなるか(山形地裁のニュースを考える。)

その他(民事事件・刑事事件等)

山形地裁の刑事公判において、傍聴席にいた裁判官が、傍聴席の入口に鍵をかけたことにより、公開原則に違反するとされ(憲法82条1項)、公判のやり直しが行われました。

https://mainichi.jp/articles/20240114/ddl/k06/040/037000c(毎日新聞 不注意で扉施錠、審理一時非公開 地裁、やり直し/山形(2024年1月14日))

驚きのニュースですが、施錠されていたことに気付き、裁判長に知らせた地裁の職員がファインプレーであったといえるでしょう。

もふもふ
もふもふ

本記事は、仮に地裁の職員が施錠に気付かずにそのまま結審してしまった場合にどうなるのか?について解説します。

【1月25日追記】大阪地裁でも同様の問題が生じました。最近、公開原則違反が問題となるケースが頻発しています。

https://www.sankei.com/article/20240124-P6WNBR47DVIEHPJN6WT2NDPQWQ/(産経新聞 法廷の扉に「非公開手続中」大阪地裁で審理やり直し(2024年1月24日))

施錠に気付かないまま判決を宣告していた場合にはどうなるのか?

本件のニュースについては、東京高判令和2年2月6日が参考になります。

この裁判例は、被告人を護送していた警察官が、(逃走防止を危惧し)傍聴席の出入口を施錠してしまったケースです。

東京高裁は、憲法82条1項の公開原則に違反するとして、原判決を破棄し、原審に差し戻しました。

今回ニュースとなった事案でも、裁判長が傍聴席の施錠に気付かずに判決を宣告してしまっていた場合には、破棄されていたことになります。

施錠されていても、現に傍聴人がいた場合でも公開原則に違反するのか?

事件関係者等、現に傍聴人がいた場合であっても、公開原則に違反するのでしょうか?

上記東京高裁は、「傍聴しようとする者が自由に審理を傍聴することができない状態であった」として、現に傍聴できた者がいたとしても、公開の原則に違反するとしています。

今回ニュースとなった事案でも、少なくとも、施錠してしまった裁判官が傍聴をしていますが、公開原則に違反することになります。

民事裁判の場合、公開原則に違反した場合にどうなるか?

この点が問題となった裁判例として、大阪高判令和3年7月8日があります。

原審において、20回の弁論準備手続期日を経た後、弁論終結の上、判決言渡し期日を指定しました。しかしながら、(口頭弁論調書上)公開法廷で口頭弁論を終結していませんでした。

大阪高裁は、原審の判決の手続が法律に違反するものとして、原判決を取消し、原審に差し戻しました。

刑事と同じ扱い(破棄差戻し)になります。

実務では、ラウンド法廷を利用し、弁論準備手続を終結し、同所でそのまま弁論に移行の上、弁論終結・判決言渡し期日の指定をすることがあります。

このような場合、裁判所は、特に意識し、公開原則に違反しないように留意しています。

具体的には、弁論準備手続は非公開ですが、弁論に移行する際に、傍聴席のドアを開け、開廷表を貼り、裁判が開かれていることを外部的にも明らかにすることが多いです。

おわりに

公開原則は、法学部の初期に学習するような知識ですが、実務において、これに違反した場合には、大事になり、事件関係者に多大な迷惑とコストを与えてしまいます。

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